松沢しげふみと笹川陽平のスモークフリーコラム

松沢しげふみと笹川陽平のスモークフリーコラム

日本と比べて、世界各国の喫煙への対応はこんなに差がある

笹川陽平

 前コラムで掲げた文言は、たしかに、それ以前の「健康のため、吸いすぎに注意しましょう」「喫煙マナーを守りましょう」と比べると、進んだように思えます。
 しかし、先進諸外国に比べるとこの程度では甘すぎます。WHO(世界保健機構)のブルントランド元事務局長は「タバコは殺人鬼だ」と公式発言していたからです。
 先進国のパッケージには目をそむけたくなるような写真が使われ、次のような文言で警告されています。

(1)EU
 まずEUからですが、パッケージの面積の30%に警告文つきの写真を載せることが義務づけられており、文字の色は白と赤の二色で目立つようになっています。
①顔を白い布で覆った死体置き場の男性に「喫煙者は早死にする」の警告文
②手術中の写真に「喫煙は動脈を詰まらせ、心臓発作や脳卒中の原因となる」
③健康な肺とニコチンで茶褐色になった肺がんに冒された肺の比較写真に「喫煙は致命的な肺がんの原因となる」
④鉄格子をつかんでうつむいているニコチン依存症患者の写真に「喫煙は依存症が強い。始めないように」
⑤歯がボロボロで、舌が変色した口のアップに「タバコの煙はベンゼン、ニトロサミン、ホルムアルデヒド、青酸ガスを含んでいる」
⑥首にこぶし大の腫瘍が露出した男の写真に「喫煙は長い苦痛を伴った死の原因となる」

(2)カナダ
カナダでは、両面に同じ写真を使い、英語とフランス語の注意書きが記入されています。
①肺がん状態の肺の写真に「喫煙は肺がんを引き起こす」
②灰皿からあふれたタバコの吸殻に「置きタバコは命を危険にさらす」
③歯周病患者の口のアップに「喫煙は歯周病の原因となる」または「喫煙は強い依存症をもつ」
④煙が立ち上がっている写真に「タバコの煙があるところに青酸ガスがある」

(3)ブラジル
①胎児の死体の手前にタバコの吸殻が置かれた写真に「タバコ製品の犠牲者」の警告文
②手術で開胸された心臓の写真に「梗塞部」
③後頭部がざっくりと左右に割けて血が流れている写真に「危険」
④喫煙者の写真に「ニコチンは薬物の一種で依存性を持つ」
⑤たくさんの管をつけた衰弱した入院中の患者の写真に「喫煙は肺がんの原因になる」
⑥ホルマリン漬けの胎児の写真に「喫煙は流産の原因となる」

 アジアでは、タイやシンガポールなども写真入りで、同様の警告文をパッケージに入れています。
 わが国では、財務省の委託を受けて「社団法人新情報センター」が2007年にパッケージの注意書きに関するアンケート調査を実施しています。調査対象は中学生以上の男女で、喫煙者と過去2年まで遡り喫煙をやめた人で、回収サンプル数は約2500人でした。
 それによると、パッケージの注意書きが「タバコの悪影響をよく伝えている」「伝えていると思う」と答えた回答が7割強もありました。
 ところが、その文言を読んでタバコをやめた人は1割、本数を減らした人は3割程度しかおらず、残る6割強は減っていないと答えているのです。このことをみても、注意書きが甘すぎることを物語っています。
「タバコをやめた」と一番多く答えた年代は10代で、全世代の約2割もいました。このことは「タバコの恐怖」をもっと教えれば喫煙に走らなくなる可能性が高いということです。
 日本のタバコのパッケージも、EUなどのタバコ先進国のようなタバコによる健康被害を表す写真を使い、「喫煙を続けると死にます」といった文言に変える必要があります。

禁煙の超後進国ニッポン

笹川陽平

2009年6月、アメリカで、「新たばこ規制法案」が成立しました。

EUに比べて規制が甘かったアメリカでしたが、この法律によって、風味の添加禁止、若者の喫煙抑制を目的とした警告文の記載が義務づけられました。

広告に対する規制も厳しくなりました。未成年者が読む出版物へのタバコ広告は厳しく制限されるほか、健康に与える影響を和らげようとする「マイルド」とか「ライト」といった言葉も使用を禁止され、学校から1000フィート(約305メートル)以内のタバコの屋外広告の設置も禁止されることになりました。

世界に冠たる「禁煙超後進国ニッポン」はというと、2004年に「たばこの規制に関する世界保健機構枠組条約」に署名しました。

また、「たばこ事業法施行規則」第36条を設けて、2005年7月以降に発売されたタバコのパッケージに注意書きをすることを法的に義務づけています。

タバコのパッケージには、肺がん、心筋梗塞、脳卒中、肺気腫、妊婦の喫煙、受動喫煙、ニコチンへの依存、未成年者への喫煙の8つについて、以下の文言のA群と群のうちの文言から各1つを選んで表と裏にそれぞれ記入し、年間を通じてその文言を変えて使うことになっています。

A群・・・肺がん、心筋梗塞、脳卒中、肺気腫
①喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の1つとなります。
疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。
②喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。
疫学的な推計によると、喫煙者は心筋梗塞により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります。
③喫煙は、あなたにとって脳卒中の危険を高めます。
疫学的な推計によると、喫煙者は脳卒中により死亡する危険性が非喫煙者と比べて約1.7倍高くなります。

B群・・・妊婦の喫煙、受動喫煙、ニコチンへの依存、未成年者への喫煙
①妊婦の喫煙は、胎児の発育障害や早座の原因の一つとなります。
疫学的な推計によると、タバコを吸う妊婦は、吸わない妊婦に比べ、低出生体重の危険性が約2倍、早産の危険性が約3倍高くなります。
②タバコの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子ども、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。
喫煙の際には、周りの人の迷惑にならないよう注意しましょう。
③人により程度は異なりますが、ニコチンにより喫煙への依存が生じます。
④未成年者喫煙は、健康に対する悪影響やタバコへの依存をより強めます。
周りの人から勧められても決して吸ってはいけません。
No.005

日本ではエイズもタバコも世論にならない

笹川陽平

日本人の国民性を揶揄する表現に「島国根性」というのがあります。タバコやエイズに関する日本人の考え方はまさにそれで、海外の国々の動きや考え方に対してきわめて鈍感で無頓着なところがあります。

私は、エイズという病気を公式の場で最初に知ることになった日本人の一人です。
1980年代の初めごろ、ライナス・ポーリング博士から、「最近、新しい性病が流行りはじめた。ついてはシンポジウムを開催するので参加してほしい」という誘いを受けました。
博士は、ノーベル平和賞・ノーベル化学賞の2つのノーベル賞を受賞した人物です。
それを契機として日本財団では、エイズが日本でも大問題になった1988年にハリウッドの大女優エリザベス・テーラーやプロバスケット選手のマジック・ジョンソンを招いて国民に対するエイズの啓蒙キャンペーンを展開しました。映画ファンやバスケットボール好きの人は覚えているのではないでしょうか。

そもそもエイズ(後天性免疫不全症候群=Acquired Immune Deficiency Syndrome略してAIDS)は、体液や血液を介して、「ヒト免疫不全ウィルス(Human Immunode-ficiency Virus略してHIV)」に感染して起こる疾患であり、発症すると免疫力が低下し、自己治癒力がなくなります。
エリザベス・テーラーは、親友のロック・ハドソンがエイズで死んだことを悲しみ、アメリカで最初にHIVエイズ撲滅運動の団体を組織し、先頭に立って行動した人です。
マジック・ジョンソンは、HIV感染者で当事者として活動した一人です。2008年現在の世界のHIV感染者3340万人で、新たな感染者は270万人です。

日本人のHIV感染者、厚生労働省調べでは、男性が7569人、女性が656人と圧倒的に男性が多くなっていますが、滞日外国人では男性994人に対し、女性1306人と女性の方がはるかに多くなっています。
エイズ患者でも、日本人男性3626人、女性260人に対し、滞日外国人は男性681人、女性332人となっています。人口比率で圧倒的に少ない外国人女性が日本人女性より多い状況です。

大キャンペーンを張ったことなどもあって、エイズ禍は一時おさまる様相をみせましたが、今また数が増え始めました。
その理由の一つは、マスコミの姿勢にもあります。海外の新聞には毎日のようにエイズ関係の記事が出ているのに、日本ではエイズ問題は以前よりも取り上げられなくなりました。だから、国民の意識が低くなってしまうのです。
このように、世論にならないところが、タバコとエイズの共通点でもあります。

日本では、民主党政権に変わって、タバコ税の上げ幅をどうするかというときに、ある大臣は「ニコチンの量で値段を決めよう」などど時代遅れのことを言っていました。時代錯誤もはなはだしく、諸外国からみると笑止千万な話としか映りません。 「タバコを吸ってはいけない。タバコを吸うと、喫煙者本人だけでなく、家族や同じ室内にいる他人まで病気にし、最悪の場合は死に至らしめる」
ということを、厚生労働省と学校がもっと厳しく教育しないといけないと思います。

アメリカでは、未成年者のような身体ができあがっていない人の喫煙には厳しい処置を講じていますが、日本は少子化社会になって、子どもは国の宝になってきているにもかかわらず、高校生の4割以上が喫煙経験があると答えています。
アメリカでの私の若いころの体験談になりますが、近所の酒屋にビールを買いに行くと、必ずパスポートの提示を求められました。日本人の学生は子どもに見えるらしく、年齢確認するのです。毎日行っているのだから、顔は覚えているにもかかわらず、そのつど見せろというのです。
しかし、よく考えてみると、未成年者に酒やタバコを売るとすぐに店が営業停止になりますから、念には念を入れていたのかもしれません。その点、日本は甘く、未成年者にタバコを売ったから店じまいさせられたという話は聞いたことがありません。
だから、厚生労働省と学校がきちんと教育しないといけないと思います。未成年だから タバコを吸ってはいけないといっているだけでは効果はあがりません。もっと踏み込んで「健康に悪いから吸わないようにしよう」ということにしていかなければ、未成年の喫煙が止むことはないでしょう。
No.004

喫煙者は「臭い」「汚い」「嫌い」の3Kマン

笹川陽平

 私は入浴が大好きというわけではありませんが、清潔さを保つために毎日入浴しています。毎日入浴するようになったのは、家内に「2日風呂に入らないと臭いわよ」と言われたのがきっかけです。最近よく耳にするようになった「加齢臭」というやつでしょう。

 少し理屈っぽく書くと、人間の皮膚の表面には脂(あぶら)けがありますが、これは皮脂腺を通じて体内の脂肪が滲み出ているからです。その脂肪に含まれる脂肪酸という物質が酸化して臭いの元になるそうですが、40代を過ぎると、脂肪酸の酸化つまり「活性酸素」を抑える力が弱まり、ノネナールと呼ばれる物質を発生させます。

 これが加齢臭です。活性酸素は、心筋梗塞、脳卒中、がんなどの生活習慣病を誘発します。同じ年齢でも男性より女性の方がホルモンの関係で臭いが弱く、また化粧品の香りなどもありあまり気にはなりません。

 加齢臭は、飲酒、偏食、運動不足、ストレスなどでも強くなりますが、最も大きく影響するのがタバコです。喫煙すると体内の活性酸素が増えて、加齢臭が強まるのです。

 この加齢臭にタバコお臭いが重なると、さらに異臭を放ち、周囲の人はたまったものではありません。タバコの臭いは毛髪や衣服にしみつくので、電車やバスのような密閉された空間では特に嫌がられます。

 タバコの臭いは、アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸の3つを主成分とする複合臭です。

 その複合臭の一つとなっている添加物のアンモニアは、し尿のような臭い、酢酸は酸っぱい臭い、アセトアルデヒドは刺激臭があります。

 これら以外にもさまざまな異臭を放つ物質が入り混じって、複雑な刺激臭を放っているのです。

 タバコの煙は、目に見える「粒子状の物質」と、目には見えない「ガス状の物質」の2つから成り立っています。

 粒子状の物質、ニコチン、ベンゾピレン、カドミウム、タールなどで、それらの多くは発がん性物質であり、肺に沈着します。

 もう一つのガス状物質の方は、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニア、酢酸などで、発がん性のあるものが含まれており、呼吸器障害を引き起こすこともあります。

 粒子状およびガス状物質のうち最も体に悪いのは、ニコチン、タール、一酸化炭素で、これらは「タバコの3悪」と呼ばれています。以下に、その理由を説明しましょう。

 ニコチンには猛毒があるだけでなく、タバコの習慣性をもたらす最大の元凶です。タバコを吸い終わって30分から1時間もすると、体内のニコチンが減って一種の禁断症状が現れ、イライラやだるさなどの症状を感じ、またタバコを吸いたくなってくるのです。

 神戸市医師会は、ニコチンは「覚醒剤」のような作用を生じさせるとし、「タバコに含まれるニコチンは、神経に働く物質で脳には覚醒剤として働き、身体依存性を生じさせ、離脱を困難にします。実は、喫煙者はこのニコチンの薬理作用を求めてタバコを吸うのです」とホームページで紹介しています。

 ニコチンには、交感神経を刺激する作用があり、末梢神経が収縮して血流が少なくなるので、タバコを吸わない人に比べて全身の血流が悪くなり、血圧が上昇したり、血管の老化を促進させてしまいます。

 また、ニコチンには体内のビタミンを奪う作用もあります。
 ビタミンCは、ビタミンAやEとともに活性酸素を除去する抗酸化剤の代表格です。シミやソバカスを目立たなくする働きはよく知られていますが、それ以外に次のような働きを持っています。

 悪玉コレステロール値を下げる。白血球の働きを高めると同時に、免疫力を高めて風邪などの感染症に対抗する。コラーゲンの生成を助けて、肌のツヤやハリを保ち、血管や骨を丈夫にする。アドレナリンの生成を助け、ストレスをやわらげる。痛風の原因となる尿酸を関節から除去する。

 タバコを吸うと、これらの働きが弱まったり、なくなってしまうのですから大変です。

 次にタールですが、タールには強力な発がん性物質があり、1日に20本タバコを吸うと、1年間でコップ半分くらい(40~110g)の量となり、肺がんを誘発します。肺がんは、各種のがんの中で1989年に胃がんを抜き、死亡者数トップになりました。  一酸化炭素は、「一酸化炭素中毒」という言葉からわかるように恐ろしい物質で、血液中の血色素と結びついて体内を軽い酸欠状態にし、血液の流れを悪くします。血液の流れが悪くなると顔にシミ、ソバカス、黒ずみ、小じわができやすくなり、肌の老化が10年から20年早まるといわれており、さらには動脈硬化や心臓病の発生を誘発するおそれもあります。

 先に紹介した神戸市医師会は、ホームページ上で次のような疑問を投げかけています。

「タバコ煙の成分分析についての正式なデータが厚生労働省のサイトにあります。明らかに発がん性物質であるベンゾピレン、ベンゼンなどの有機化合物やニトロソアミン、一酸化炭素、シアン化水素、窒素化合物、アンモニアなど有害物質がずらりと表に並んでいます。これを見るだけでもなぜ今でも『タバコ』が嗜好品として合法的に販売されているのか疑問です」
No.003

タバコは知らず知らず他人の命をも縮める

笹川陽平

タバコを吸う人の中には、なぜオフィスで喫煙できないのか、差別ではないかと不満を漏らす人もいます。そんなことを言う人は、「受動喫煙」の被害を知らない人です。受動喫煙とは、タバコを吸わない人がタバコを吸っている人の煙を吸わされることです。

 受動喫煙が病気を誘発することを、世界で最初に発見したのは、日本の平山雄博士(当時国立がんセンター疫学部長)でした。彼は1966年から26万人を超える日本人のデータを集め、夫が喫煙者である場合のタバコを吸わない妻の肺がんのリスクが1.6~2.1倍高まることを立証しました。これは、夫が1日にタバコ19本未満の喫煙者と、20本以上の喫煙者を対象に統計をとった1981年時点の結果です。

 一口に「タバコの煙」と言っても、吸い方によって二種類に分けられ、タバコから直接喫煙者自身が吸い込む煙のことを「主流煙」、火をつけた部分から空気中に漂っている煙のことを「副流煙」と呼んでいます。主流煙の方が当然、タバコの害が強いと考えがちですが、事実が逆です。主流煙はタバコのフィルターを通るため一定の有害物質は除去されますが、副流煙は何も通らずそのまま空気中に放出されるため、主流煙のニコチン2.8倍、タール3.4倍、一酸化炭素4.7倍の害を与えることになるのです。

 副流煙は、肺がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がんなどの各種のがんだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞、流・早産、乳幼児突然死症候群なども引き起こす原因にもなるので問題になっているのです。

 喫煙者は、自分自身だけでなく、知らず知らずのうちに周囲の人の命を縮めていることになるわけですから、一種の殺人行為を犯しているといっても過言ではなく、絶対に許されることではないと思います。

 アメリカのシアトル大学のワイス博士が、タバコを吸う人を一人雇用すると年間55万円余分にかかると発表したことがあります。

 その内訳は、喫煙時間や喫煙による病気欠勤によって生じる労働力の低下が24万円、喫煙による医療費や保険料の超過支出が19万円、空調フィルターなどの管理維持費が12万円となっています。すなわち喫煙者は、非喫煙者よりも会社に負担をかけていることになるわけです。

 さらに喫煙は作業効率もダウンさせます。

 たとえばパソコン操作。たとえオフィス内での喫煙が許されていても、喫煙しながらパソコンのキーを打つのは、タバコを吸わない人に比べると、細かなことかもしれませんが仕事の効率は当然落ちてしまいます。となれば、その分、給料を下げないと不平等だという声があがっても仕方がないことかもしれません。現に、2010年3月8日の日本経済新聞では「勤務中の喫煙時間は休憩とみなされるか」というような問題が提起されていました。

 実際、欧米では、喫煙に要する時間は、「ニコチンを補給している時間であり、仕事に従事している時間ではない」との見方が強くなっているのです。

 欧米では、1960年代が今の日本のような状態だったことから、広告規制、タバコのパッケージでの警告表示、公共の場所での禁煙、未成年の喫煙禁止策など、早々と各種の手を打ってきました。

 一方、日本は規制がゆるく、未だ"タバコ後進国"から抜け出せないでいます。

 タバコを吸う人は、異性にモテないだけでなく、就職しづらくなり、せっかく就職できたとしても吸っていると給料を下げられかねない、「3ない時代」になってきたといえます。

 これは職場だけのことでなく、家で吸っても同じで、間違いなく家族に被害を与えます。神戸市医師会はホームページで、「6畳の部屋で一人が1本のタバコを吸うだけで、空気は危険なレベルまで汚染されます。ガス状の物質に対しては、空気清浄器はまったく無効です」と書いています。

 タバコはこのように、「吸う」ことによって、「モテない」「就けない」「上がらない」という自分への損だけでなく、職場や世の中でそれ以上の大きな損害を与えています。そしてその「損」を裏返した分だけ、「吸わないこと」「やめること」によって、自分や世の中に大きな「得」を与えるのです。
No.002

タバコは実働時間を減らし、給料を下げる

笹川陽平

タバコは今後、就職の条件としてもマイナスになりそうな傾向が出てきました。2009年12月12日付の「読売新聞」朝刊には、「喫煙者は採用しません」という見出しの記事が載り、新入社員に社内外でタバコを吸わないという誓約書を書かせている「星野リゾート」という会社が紹介されていました。

この会社の採用方針によれば、タバコを吸う学生は採用しない、つまり前回のコラムのデータのように「モテない」だけでなく、仕事にも「就けない」というわけです。

厚生労働省が2007年に行った調査では、職場全体を禁煙にしている会社は24.4%で、5年前の調査時に比べると10.2ポイント増になっています。数そのものはまだそう多くはありませんが、確実に増加傾向にあります。

私の勤務先でも、オフィスでの喫煙は禁じております。
タバコが吸いたい人は、外に設けた特定の喫煙場所にでのみ吸うようにしているのです。
先日、喫煙者がそこを利用する回数を広報担当者が調査したところ、1日平均6回利用していたそうです。


タバコを吸う人は「1日にたった6本じゃないか。堅いこと言うなよ」と反論するかもしれませんが、それを就労時間に換算すると馬鹿にならないのです。
そのつど、エレベーターに乗って喫煙場所へ行き、3分くらいかけてタバコを吸い、またエレベーターに乗って戻ってくるまでに10分はかかります。そういうことを1日6回繰り返すと、合計1時間になるのです。
これは昼休み時間に相当します。タバコを吸わない人から見ると、「喫煙者だけ、昼休みが2回ある」ということになり、不平等な印象はぬぐえません。

経営者から見ても、1日1時間というのは気分転換にしては長すぎますから、「そんなに遊んでいるなら、給料、減らすぞ」と言い出す経営者が出てくるかもしれません。
 あるいは、「いっそのこと、喫煙者は喫煙場所へノートパソコンを持ち出して、そこで仕事をしてもらう」と言うことにもなりかねません。
No.001

「モテない」「就けない」「上がらない」の「3ない」タバコ

笹川陽平

「タバコで損する」とか「得をする」とか、大体、タバコに関してそんなに「損得」が出ることがあるんですか? とおっしゃる人がいるかもしれません。
「そんな人はほんとにソンをします」などと、冗談を言ってる場合ではありません。
 実は本当にタバコで損をしたり、得をしたりすることが、現実に起きているのです。では、タバコで損をしないで、得をするにはどうするか--。
 その第一は何と言ってもまず、タバコを吸う人と吸わない人を、いろいろな観点から徹底的に調べ、どちらが、どのような点で、どのくらい得をしているか、比較することです。
 タバコを「吸う人」より「吸わない人」の方が得をし、「吸う人」は「吸わない人」より損をしていることは、統計的にも科学的にも、明らかになっています。
「仮に損だとしても、大したことはない」と思っている人も多いようですが、その損の度合いがどれほどのものか、よくわかっていない人がほとんどです。最大の損は、命を失う確率が、吸わない人よりはるかに高いことですが、順次話を進めていきましょう。
 今では、タバコは「モテない」「仕事に就けない」「給料が上がらない」の「三ないグッズ」になっています。そのことが次々に明らかになってきました。
 まず、「タバコは、異性にモテるかモテないかの重要な理由になる」という統計があります。「タバコと恋愛」に関する法政大学生の意識調査の結果です。

 タバコを吸っている異性とは結婚できない --- 男69.4%、女61.1%。
 タバコを吸っている異性を恋人にしたくない --- 男60.2%、女50.1%。


 サンプル数が1072人(男499人、女573人)と、統計的には信頼に足るデータだと思います。
 もう少し詳しく言うと、2009年秋に法政大学人間環境部の公衆衛生ゼミが、学内の1年生〜4年生を対象に「タバコを吸う異性をどう思っているか」という調査を行った結果、このようなデータが出たのです。
 昔から「キスはレモンの味」などと言い、甘酸っぱくも爽やかなイメージでした。それが、タバコのヤニで黄色くなった歯、不快な口臭では、甘い恋の夢も台無しになってしまいます。
 本調査では、9割がタバコを吸う異性にモテようと思ったら、タバコは吸わない方がいい、吸ってる人はやめたほうがいい、という時代になったということでしょう。
 この調査に限らず、喫煙を含めて80%以上の人がタバコの臭いを「不快に思う」という数字が出ています。
 昔は巨人の長嶋茂雄さんのようなワイシャツの第一ボタンを外して胸毛をのぞかせた男性を「カッコイイ」「男らしい」と言っていましたが、時代が変わって好みも変化し、今は胸毛もすね毛もなしのツルツルした男の体がいいという「草食系の時代」です。
若い女性にとって、タバコの臭いをプンプンさせているような男性は、不潔な嫌うべき存在でこそあれ、恋愛の対象としてふさわしい存在とは、お世辞にも言えなくなってしまったのです。

笹川陽平

笹川陽平(ささかわ ようへい)

1939年1月8日 東京生まれ。
明治大学政治経済学部卒。
現在、日本財団会長、WHOハンセン病制圧特別大使、ハンセン病人権啓発大使(日本政府)ほか。40年以上にわたるハンセン病との闘いにおいては、世界的な制圧を目前に公衆衛生上だけでなく、人権問題にも目を向け、差別撤廃のための運動に力を注ぐ。ロシア友好勲章(1996)、WHOヘルス・フォア・オール金賞(1998)、ハベル大統領記念栄誉賞(2001)、読売国際協力賞(2004)、国際ガンジー賞(2007)、ノーマン・ボーローグ・メダル(2010)など多数受賞。著書「この国、あの国」(産経新聞社)、「外務省の知らない世界“素顔”」(産経新聞社)、「人間として生きてほしいから」(海竜社)、「若者よ、世界に翔け!」(PHP研究所)、「不可能を可能に 世界のハンセン病との闘い」(明石書店)など。

関連リンク

分煙社会・スモークフリーとはWHOのたばこ規制条例
神奈川県における受動喫煙防止条例禁煙・卒煙のススメ