スモークフリーコラム

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日本ではエイズもタバコも世論にならない

笹川陽平

日本人の国民性を揶揄する表現に「島国根性」というのがあります。タバコやエイズに関する日本人の考え方はまさにそれで、海外の国々の動きや考え方に対してきわめて鈍感で無頓着なところがあります。

私は、エイズという病気を公式の場で最初に知ることになった日本人の一人です。
1980年代の初めごろ、ライナス・ポーリング博士から、「最近、新しい性病が流行りはじめた。ついてはシンポジウムを開催するので参加してほしい」という誘いを受けました。
博士は、ノーベル平和賞・ノーベル化学賞の2つのノーベル賞を受賞した人物です。
それを契機として日本財団では、エイズが日本でも大問題になった1988年にハリウッドの大女優エリザベス・テーラーやプロバスケット選手のマジック・ジョンソンを招いて国民に対するエイズの啓蒙キャンペーンを展開しました。映画ファンやバスケットボール好きの人は覚えているのではないでしょうか。

そもそもエイズ(後天性免疫不全症候群=Acquired Immune Deficiency Syndrome略してAIDS)は、体液や血液を介して、「ヒト免疫不全ウィルス(Human Immunode-ficiency Virus略してHIV)」に感染して起こる疾患であり、発症すると免疫力が低下し、自己治癒力がなくなります。
エリザベス・テーラーは、親友のロック・ハドソンがエイズで死んだことを悲しみ、アメリカで最初にHIVエイズ撲滅運動の団体を組織し、先頭に立って行動した人です。
マジック・ジョンソンは、HIV感染者で当事者として活動した一人です。2008年現在の世界のHIV感染者3340万人で、新たな感染者は270万人です。

日本人のHIV感染者、厚生労働省調べでは、男性が7569人、女性が656人と圧倒的に男性が多くなっていますが、滞日外国人では男性994人に対し、女性1306人と女性の方がはるかに多くなっています。
エイズ患者でも、日本人男性3626人、女性260人に対し、滞日外国人は男性681人、女性332人となっています。人口比率で圧倒的に少ない外国人女性が日本人女性より多い状況です。

大キャンペーンを張ったことなどもあって、エイズ禍は一時おさまる様相をみせましたが、今また数が増え始めました。
その理由の一つは、マスコミの姿勢にもあります。海外の新聞には毎日のようにエイズ関係の記事が出ているのに、日本ではエイズ問題は以前よりも取り上げられなくなりました。だから、国民の意識が低くなってしまうのです。
このように、世論にならないところが、タバコとエイズの共通点でもあります。

日本では、民主党政権に変わって、タバコ税の上げ幅をどうするかというときに、ある大臣は「ニコチンの量で値段を決めよう」などど時代遅れのことを言っていました。時代錯誤もはなはだしく、諸外国からみると笑止千万な話としか映りません。 「タバコを吸ってはいけない。タバコを吸うと、喫煙者本人だけでなく、家族や同じ室内にいる他人まで病気にし、最悪の場合は死に至らしめる」
ということを、厚生労働省と学校がもっと厳しく教育しないといけないと思います。

アメリカでは、未成年者のような身体ができあがっていない人の喫煙には厳しい処置を講じていますが、日本は少子化社会になって、子どもは国の宝になってきているにもかかわらず、高校生の4割以上が喫煙経験があると答えています。
アメリカでの私の若いころの体験談になりますが、近所の酒屋にビールを買いに行くと、必ずパスポートの提示を求められました。日本人の学生は子どもに見えるらしく、年齢確認するのです。毎日行っているのだから、顔は覚えているにもかかわらず、そのつど見せろというのです。
しかし、よく考えてみると、未成年者に酒やタバコを売るとすぐに店が営業停止になりますから、念には念を入れていたのかもしれません。その点、日本は甘く、未成年者にタバコを売ったから店じまいさせられたという話は聞いたことがありません。
だから、厚生労働省と学校がきちんと教育しないといけないと思います。未成年だから タバコを吸ってはいけないといっているだけでは効果はあがりません。もっと踏み込んで「健康に悪いから吸わないようにしよう」ということにしていかなければ、未成年の喫煙が止むことはないでしょう。

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