スモークフリーコラム

スモークフリーコラム

タバコは知らず知らず他人の命をも縮める

笹川陽平

タバコを吸う人の中には、なぜオフィスで喫煙できないのか、差別ではないかと不満を漏らす人もいます。そんなことを言う人は、「受動喫煙」の被害を知らない人です。受動喫煙とは、タバコを吸わない人がタバコを吸っている人の煙を吸わされることです。

 受動喫煙が病気を誘発することを、世界で最初に発見したのは、日本の平山雄博士(当時国立がんセンター疫学部長)でした。彼は1966年から26万人を超える日本人のデータを集め、夫が喫煙者である場合のタバコを吸わない妻の肺がんのリスクが1.6~2.1倍高まることを立証しました。これは、夫が1日にタバコ19本未満の喫煙者と、20本以上の喫煙者を対象に統計をとった1981年時点の結果です。

 一口に「タバコの煙」と言っても、吸い方によって二種類に分けられ、タバコから直接喫煙者自身が吸い込む煙のことを「主流煙」、火をつけた部分から空気中に漂っている煙のことを「副流煙」と呼んでいます。主流煙の方が当然、タバコの害が強いと考えがちですが、事実が逆です。主流煙はタバコのフィルターを通るため一定の有害物質は除去されますが、副流煙は何も通らずそのまま空気中に放出されるため、主流煙のニコチン2.8倍、タール3.4倍、一酸化炭素4.7倍の害を与えることになるのです。

 副流煙は、肺がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がんなどの各種のがんだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞、流・早産、乳幼児突然死症候群なども引き起こす原因にもなるので問題になっているのです。

 喫煙者は、自分自身だけでなく、知らず知らずのうちに周囲の人の命を縮めていることになるわけですから、一種の殺人行為を犯しているといっても過言ではなく、絶対に許されることではないと思います。

 アメリカのシアトル大学のワイス博士が、タバコを吸う人を一人雇用すると年間55万円余分にかかると発表したことがあります。

 その内訳は、喫煙時間や喫煙による病気欠勤によって生じる労働力の低下が24万円、喫煙による医療費や保険料の超過支出が19万円、空調フィルターなどの管理維持費が12万円となっています。すなわち喫煙者は、非喫煙者よりも会社に負担をかけていることになるわけです。

 さらに喫煙は作業効率もダウンさせます。

 たとえばパソコン操作。たとえオフィス内での喫煙が許されていても、喫煙しながらパソコンのキーを打つのは、タバコを吸わない人に比べると、細かなことかもしれませんが仕事の効率は当然落ちてしまいます。となれば、その分、給料を下げないと不平等だという声があがっても仕方がないことかもしれません。現に、2010年3月8日の日本経済新聞では「勤務中の喫煙時間は休憩とみなされるか」というような問題が提起されていました。

 実際、欧米では、喫煙に要する時間は、「ニコチンを補給している時間であり、仕事に従事している時間ではない」との見方が強くなっているのです。

 欧米では、1960年代が今の日本のような状態だったことから、広告規制、タバコのパッケージでの警告表示、公共の場所での禁煙、未成年の喫煙禁止策など、早々と各種の手を打ってきました。

 一方、日本は規制がゆるく、未だ"タバコ後進国"から抜け出せないでいます。

 タバコを吸う人は、異性にモテないだけでなく、就職しづらくなり、せっかく就職できたとしても吸っていると給料を下げられかねない、「3ない時代」になってきたといえます。

 これは職場だけのことでなく、家で吸っても同じで、間違いなく家族に被害を与えます。神戸市医師会はホームページで、「6畳の部屋で一人が1本のタバコを吸うだけで、空気は危険なレベルまで汚染されます。ガス状の物質に対しては、空気清浄器はまったく無効です」と書いています。

 タバコはこのように、「吸う」ことによって、「モテない」「就けない」「上がらない」という自分への損だけでなく、職場や世の中でそれ以上の大きな損害を与えています。そしてその「損」を裏返した分だけ、「吸わないこと」「やめること」によって、自分や世の中に大きな「得」を与えるのです。

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